Ⅰ.緒言
わが国の「診療看護師(NP)」(以下,診療看護師と
する)の養成教育は,2008年に大分県立看護科学大学
大学院修士課程において開始され,2018年現在,日本
NP教育大学院協議会のもと愛知医科大学大学院看護学
研究科を含む8大学院にて養成が行われている.診療看
護師の活動場所は,一般病院の病棟から外来,訪問看護
ステーション,福祉施設,診療所まで多岐にわたり1),
約360名あまりの診療看護師が全国で活動している.
愛知医科大学病院では,2015年から診療看護師の活
動を開始し,現在4名の診療看護師が,主に周術期領域
で活動を行っている.診療看護師は,主に麻酔科では術
中の麻酔管理を,周術期集中治療部では集中治療管理に
携わっている.活動開始から3年を経過し,診療看護師
活動の実際と今後の課題について報告する.
【緒言】
本邦では,医療の質評価指標である再入院率に関する調査は少なく,看護師介入による再入院率への効果は明
らかでない.本研究では,後方視的に診療看護師介入症例と非介入症例を比較することで,診療看護師の介入が
入院高齢患者の再入院率に与える効果を明らかにし,実践内容の有効性を検証する.
【方法】
2016年4月~2017年12月末までの,総合診療科領域の輪番制入院となった65歳以上の患者706名について,
後方起点型コホート調査を実施し,診療看護師の介入有無による違いを評価した.主要評価項目は再入院率とし,
副次的評価項目は,在院日数,院内死亡率とした.
【結果】
対象者の平均年齢は85.6±7.2歳で,男性276例,女性430例だった.退院時病名は肺炎や腎盂腎炎等が多
かった.対象者属性は,予後予測スコアであるCharlson Comorbidity Index以外の項目については,診療看護
師介入例と非介入例との間で有意差は認めなかった.6週以内再入院率は,診療看護師介入例の方が有意に低
かった(p=0.041).1週間以内再入院率,30日以内再入院率,在院日数,院内死亡率は,有意差を認めなかっ
た.
【結論】
診療看護師の介入は,入院高齢患者の6週以内再入院率を低下させる可能性がある.診療支援,症状マネジメ
ント,移行期ケア,チーム支援等,診療看護師独自のコンピテンシーを活かした高度看護実践が有用と思われた.
Key Words: 再入院率,高齢者,診療看護師,包括的健康アセスメント,移行期ケア